ドローンの普及に伴い、空撮や撮影を趣味とする方々が増えてきました。空撮を楽しむ一方で、ドローンに関する法律である「小型無人機等飛行禁止法」に違反してしまうことがあります。本記事では、この法律について解説し、違反しないために必要な基礎知識について説明します。
小型無人機等飛行禁止法
2015年に、首相官邸屋上でドローンが発見された事案を受け、テロ行為等の危険に対する未然防止を図るために国の重要な施設や外国公館、防衛関係施設、空港及び原子力事業所の周囲おおむね300メートルの地域において小型無人機等の飛行を原則禁止とする本法律が制定され、2016年に施行されました。
第一条 この法律は、国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等、防衛関係施設、空港及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行を禁止することにより、これらの重要施設に対する危険を未然に防止し、もって国政の中枢機能等、良好な国際関係、我が国を防衛するための基盤並びに国民生活及び経済活動の基盤の維持並びに公共の安全の確保に資することを目的とする。
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規制の対象になる小型無人機等とは
小型無人機(いわゆる「ドローン」等)
「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他の航空の用に供することができる機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの」となっており、いわゆるドローンやラジコン機、農薬散布用のヘリコプター等が該当します。
特定航空用機器
「航空法(昭和27年法律第231号)第2条第1項に規定する航空機以外の航空の用に供することができる機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができるもの(高度又は進路を容易に変更することができるものとして国家公安委員会規則で定めるものに限る)」となっており、気球やハンググライダー、パラグライダー等が該当します。
対象になる施設
小型無人機等の飛行が原則禁止されている対象施設は次のとおりです。
-
国の重要な施設等
- 国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居等
- 危機管理行政機関の庁舎
- 対象政党事務所
- 対象外国公館等
- 対象防衛関係施設
- 対象空港
- 対象原子力事業所
- オリンピックやワールドカップ等の大会会場
- 外国要人が利用する空港
飛行禁止区域
対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300メートルの地域の上空においては、小型無人機等の飛行を禁止しています。
- 対象施設の敷地・区域の上空(レッド・ゾーン)
- 周囲おおむね300メートルの上空(イエロー・ゾーン)
飛行禁止の例外
下記の場合に限り、小型無人機等の飛行禁止に関する規定は適用されません。
- 対象施設の管理者又はその同意を得た者による飛行
- 土地の所有者等が当該土地の上空において行う飛行
- 土地の所有者の同意を得た者が、同意を得た土地の上空において行う飛行
- 国または地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
ただし、飛行禁止の例外にあたる場合であっても、対象施設及びその周囲おおむね300メートルの周辺地域で小型無人機等を飛行させる場合は、国家公安委員会規則で定められた通り、あらかじめ対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会等への通報が必要です。
飛行禁止の例外に伴う必要な通報手続き
飛行を行う48時間前までに、飛行を予定している対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して、都道府県公安委員会等へ通報する必要があります。(規則第3条関係)
警察庁ホームページの「警察行政手続きサイト」からで通報することも可能です。
通報の様式
都道府県公安委員会等への通報については、小型無人機等飛行禁止法施行規則で様式が定められています。
国又は地方公共団体の業務を実施するために行う通報書
対象空港管理者への通報書
それ以外の飛行に関する通報書
同意を証明する書面の写し
当該対象施設の管理者等から同意を得て飛行を行う場合は、交付された同意を証明する書面の写しを警察署に提出してください。
国の重要な施設等
小型無人機等の飛行を行う者が国又は地方公共団体の委託を受けた事業者等である場合には、委託を受けて飛行を行うことを証明する書面の写しを提出する必要があります。
対象防衛関係施設(自衛隊)
飛行を行う10営業日前までに、対象防衛関係施設の管理者の同意を証明する書面の交付を受けてください。
交付を受けたら、飛行を行う48時間前までに対象防衛関係施設の管理者及び管轄の警察署、海上保安部等(対象施設周辺地域に海域が含まれる場合に限る)に所定の様式の通報書を提出する必要があります。
対象防衛関係施設(在日米軍)
飛行を行う30日前までに対象防衛関係施設の管理者の同意を証明する書面の交付を受けてください。
交付を受けたら、飛行を行う48時間前までに対象防衛関係施設の管理者及び管轄の警察署、海上保安部等(対象施設周辺地域に海域が含まれる場合に限る)に所定の様式の通報書を提出する必要があります。
対象空港
規制の対象となる空港は、新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港(羽田空港)、中部国際空港、大阪国際空港(伊丹空港)、関西国際空港、福岡空港、那覇空港の8空港です。
空港の敷地又は区域で小型無人機等を飛行させる場合には、空港管理者の同意を証明する書面の交付を受け、飛行を行う48時間前までに空港管理者及び管轄の警察署、海上保安部等(対象施設周辺地域に海域が含まれる場合に限る)に所定の様式の通報書を提出する必要があります。
また、航空法で定められた「空港等の周辺」にも該当するため、国土交通大臣の許可・承認の手続きが必要になります。
機体の提示
警察署において、実際に飛行させる小型無人機等の実機を提示する必要があります。困難な場合には、当該小型無人機等の写真を提示してください。
緊急時における口頭による通報
災害その他緊急やむを得ない場合においては、小型無人機等の飛行開始時間の直前までに、警察署に口頭で通報することで足ります。
ただし、その場合であっても、対象施設の管理者等から当該飛行に係る同意を通報に先立って得る必要があります。
罰則
小型無人機等飛行禁止法の規定に違反して
- 対象施設の敷地・区域の上空(レッド・ゾーン)で小型無人機等の飛行を行なった者
- 小型無人機等飛行禁止法第11条第1項に基づく警察官の命令(海上保安官、対象施設を職務上警護する自衛官、対象空港管理者の職務執行についても準用)に違反した者